【レビュー】騙し合いの応酬がたたみ掛けられるインド映画『盲目のメロディ』

盲目のメロディ




ボリウッド映画を象徴する華々しい踊りや壮大なロケもなく、全世界興行収入64億円とインド映画として歴代14位を記録した『盲目のメロディ~インド式殺人狂騒曲~』

主人公は盲目のピアニスト・アーカーシュ。しかしそれはピアノの腕を上達させるための嘘で、実はばっちり見えている。

ある日、往年の大スター・プラモードから演奏依頼を受け、彼の豪邸に訪れると、プラモードの妻・シミ―と浮気相手である警察署長がプラモードを殺害したのを目撃してしまう。

しかし、シミ―と警察署長はアーカーシュが盲目だと信じているため、それ前提であれやこれや小細工をし、うまく切り抜けられたと思い込んでいる。

だが、アーカーシュの目は実は見えているんじゃないかという疑惑が生まれ、あの手この手で真偽を確かめようとする中で、アーカーシュの受難はどんどん肥大化していく──。

自分ひとりのときと誰かに見られているときとでは、大なり小なり行動が変わるのが人間だ。それもあり、「目が見えない」とされているアーカーシュは次々と驚くべき光景を目撃する。

目線が少しでも動いたらアウト、表情が少しでも変わったらアウト、体が少しでも動いたらアウトという、自らが芸を磨くために設けた嘘によって身動きができなくなっていくアーカーシュの闘いがスリリングで笑える。

登場人物の大半は自分のことしか考えておらず、殺人の保身に加えて、途中から大金も絡むことで、どんどん欲望に忠実になり、周りの状況によってコロコロと行動を変える。

ブラックかつコミカルな騙し合いと裏切りの応酬。これで終わるかと思ってもまだまだ斜め上の展開が続く脚本力と演出力がとても巧みだ。

 

『盲目のメロディ~インド式殺人狂騒曲~』あらすじ

盲目のピアニスト、アーカーシュの誰にも言えない秘密。それは、本当はバッチリ目が見えること!
芸術のため盲目を装う彼はある日、大スター、プラモードからの演奏依頼を受けて訪ねた豪邸で、妻のシミーと、その不倫相手のプラモード殺害現場を“目撃”してしまう。死体も犯人も見えないフリで切り抜けたアーカーシュだったが、駆け込んだ警察の署長こそ現場にいた犯人だった。
次々に襲い来る災難・・・そこには裏切りと騙しあいの大騒動が待っている。

■出演:アーユシュマーン・クラーナー、タブー、ラーティカ・アープテ―
■監督:シュリラーム・ラガヴァン
■配給:SPACEBOX
■宣伝:シネブリッジ

公式サイト:m-melody.jp

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小松 香里
編集者。音楽・映画・アート等。 ご連絡はDMまたは komkaori@gmail~ まで