2020年夏に東京・松屋銀座で開幕し、その後全国を巡回している「誕生65周年記念 ミッフィー展」が昨年立川にオープンした複合文化施設「PLAY!」内にある「PLAY! MUSEUM」にて、巡回展に新たな 楽しみを加えた形で開催されている。
作者ディック・ブルーナの貴重な直筆原画や創作メモ、そして、漫画家・さくらももこや児童文学者・石井桃子、絵本作家・酒井駒子等、ミッフィーとブルーナに魅せられた面々による言葉と作品たち。 本展独自の企画として、ブルーナと親交のあった元朝日新聞編集委員の森本俊司による66の解説、コスチュームクリエイターのイナドメハルヨが作ったミッフィーのような耳をつけて写真の撮れるコーナー、本展のアート・ディレクションを手掛ける祖父江慎によるふとんをかけるとにっこりほほえむミッフィーが展開される等、よりミッフィーの魅力を多面的に伝える内容となっている 。展示が多く並ぶ中、写真家・川島小鳥による瑞々しいうさぎの写真が随所に展示されていたり、クリエティブ・ユニットSPREADが青、赤、黄、緑、グレー、茶というブルーナ・カラーと黒いラインによる色彩表現を施していたり、空間ごと体感できるのが楽しい。
「子どもたちの正直なまっすぐな目にこたえよう」というブルーナの思いから、ミッフィーたちの顔は常に正面向き。細い筆の先に黒い絵の具をつけ、ひとつひとつ点を打つように描いていたことから生まれるわずかに震えた線によって、どれにも多大なぬくもりが感じられる。アンリ・マティスを敬愛し、ほんの小さな違いで表情や状況の変化をつけるブルーナの技術と感性にも改めて引き込まれる。
ミッフィー愛に溢れた展示と、ブルーナの半生とミッフィーに込められた想い。とてつもなくシンプルなミッフィーの絵柄がいかに洗練されているかと同時に優しさと可愛らしさを持ち合わせているか。その物語やキャラクターがいかに普遍的でいつの時代にも深く浸透するものか。そんなミッフィーにまつわるすごさが存分に伝わってくる。
本展の副読本として出版された森本氏の解説が掲載されたポケットサイズの書籍『ちいさなぬくもり・66のおはなし』(編集・装丁 祖父江慎+脇田あすか(cozfish))もまた、ミッフィーの魅力をさらに多層的にしている。
メイン画像:誕生65周年記念 ミッフィー展 展覧会ビジュアル Illustrations Dick Bruna © copyright Mercis bv,1953-2021 www.miffy.com