【レビュー】「大人」だからこそ強く心を突き動かされるアニメ映画『空の青さを知る人よ』

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アニメ監督・長井龍雪×脚本家・岡田麿里×キャラクターデザイン&総作画監督・田中将賀からなるチーム・超平和バスターズ。

『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『心が叫びたがってるんだ。』に続く、秩父を舞台にしたアニメ作品『空の青さを知る人よ』。

17歳・高校二年生のあおいは、地元・秩父を「山という壁に囲まれている盆地は牢獄に収容されているのと一緒」と揶揄し、高校卒業後、大好きなベースを手に上京してミュージシャンになることを夢見ている。

あおいとふたりきりで暮らす姉のあかねは31歳。13年前に事故で両親を失った当時は高校三年生で、幼いあおいを育てるために、恋人・慎之介との上京を諦め、地元で就職した。

あおいは、自分のために地元に残ったあかねに負い目を感じながらも、淡々と日々を過ごすあかねのようにはなりたくないという気持ちも持っており、それはまさに10代が「大人」に対して抱くあの刺々しい感覚だ。

そこに、かつてのあかねの恋人であり、あおいに音楽の楽しさを教えた張本人・慎之介が13年ぶりに地元に戻り、同じタイミングで、あおいの前には上京した当時の18歳の慎之介も現れて──。

前2作は青春ど真ん中の群像劇だったが、今作の主役は18歳と31歳。
しかも、その中には過去の自分と今の自分が同時に存在しており、その間に流れる13年という年月に、多くの「大人」は自らを重ね、様々な想いに駆られるであろう。

また、ふたりきりの家族であり姉妹という関係性の描写もとてもリアルで、親子・姉妹・恋人という間柄における複雑な感情、そして、自分自身における過去・現在・未来に対する複雑な感情と、極めて多面的な感情が、魅力的なキャラクターたちによってとても丁寧に描かれているのが見事だ。

「空の青さを知る人」とはどんな人なのか? そして、それを知ると人はどうなるのか?

大人だってまだまだこれからがあるという諦めない話でもあるし、何かを諦めることで一番大事なものを手にする話でもある。


映画『空の青さを知る人よ』

■出演:吉沢亮 吉岡里帆 / 若山詩音 落合福嗣 大地葉 種﨑敦美 / 松平健
■監督:長井龍雪
■脚本:岡田麿里
■キャラクターデザイン・総作画監督:田中将賀
■主題歌:「空の青さを知る人よ」「葵」
あいみょん(unBORDE/Warner Music Japan)
■音楽:横山 克
■配給:東宝


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小松 香里
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