【レビュー】山﨑賢人×松岡茉優×行定勲×又吉直樹──映画『劇場』の愛おしさ




自ら劇団を立ち上げ夢を追う山﨑賢人演じる永田。

そして、永田を献身的に支える松岡茉優演じる沙希。

無邪気で天真爛漫で芯の強い女性が、演劇に夢中な恋人といることによって、その「うまくいかなさ」を共有し、どんどん堕ちていってしまう様。

一方、恋人に甘やかされることでプライドが保たれ、その「うまくいかなさ」に蓋をして停滞し続ける様──自分の才能を信じることが正義である20代のふたり。

お互いに東京に夢を重ね、その場所で一緒にいることでその「夢」にしがみついてるようにも見える。

永田が転がり込んだ、沙希が聖母のような表情で「ここが一番安全な場所だよ」と口にする彼女の部屋は、厳しい現実から身を守るシェルターのような場所でもある。

主演の山﨑賢人と松岡茉優が最高に素晴らしく、あの終盤の長回しのシーンは永田と沙希の弱さも甘さも愚かさもすべて昇華して、本作をとびきり尊い「純愛映画」にしている。

 

『劇場』

■監督:行定勲  ■脚本:蓬莱竜太
■出演:山﨑賢人、松岡茉優、寛 一 郎、伊藤沙莉 他
■原作:「劇場」又吉直樹 著(新潮文庫) 
■配給:吉本興業

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