ゴツいおじさんの無邪気な偏愛が一線を超える―ジョン・トラボルタの怪演『ファナティック ハリウッドの狂愛者』




ジョン・トラボルタが冴えない映画オタクに!?

『サタデー・ナイト・フィーバー』で一世を風靡し、『パルプ・フィクション』の憎めないギャング役で映画界に見事に返り咲いたジョン・トラボルタ。

いろんな出演作を見ると確かに十分に怪優の一面も覗かせる彼だが、これほどまでにそのイメージから乖離した役の怪演を誰が想像できただろう。

ハリウッドで地味なパフォーマンスを見せてはささやかな日銭を得ていた主人公ムースは、あるアクション俳優の熱狂的なファンだった。

限定グッズの次は本人のサインを得ようと前のめりになるムースだったが、たまたま俳優本人から塩対応を受けてしまったことから、ついにそのタカが外れてしまう・・・

映画『ミザリー』のように盲信的なファンによる狂気の沙汰を描きつつも、同作と異なるのは不器用なファン自身の純粋さや悲哀をもすくってみせるところ。

そこに決定的な共感を覚えるとはいかないまでも、持てる者の寛容さに欠けた傲慢さと、持たざる者の一線を超えるほどの純粋さ、この2つを意識して対比させる監督の意図がしっかりと伝わってくる。

とにかく大きな図体を小刻みに震えさせながら、興奮気味に愛してやまない俳優のことを語るムース(トラボルタ)の姿は、ふとした契機で爆発しそうな危うさも含めて一見の価値があるだろう。

 

『ファナティック ハリウッドの狂愛者』

■監督:フレッド・ダースト
■脚本:フレッド・ダースト、 デイブ・べーカーマン
■出演:ジョン・トラボルタ、 デヴォン・サワ、 アナ・ゴーリャ、ジェイコブ・グロドニック
■提供:ギャガ、 イオンエンターテイメント
■配給:イオンエンターテイメント

© BILL KENWRIGHT LTD, 2019

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毘沙門天 華男
映画、旅、ボクシング、読書、絵を描くこと、サウナ、酒が趣味の福岡出身の多動性中年。このプロフィールを書いてる途中もドラクエウォークをしています。