2016年に公開されるや、全編全く気を休める暇もない緊張感の連続が話題となりヒットを遂げた前作『ドント・ブリーズ』。
5年の時を経て公開された待望の続編では、スティーヴン・ラングが再び盲目の老人役を演じ、予想は裏切るが決して期待は裏切らない極上のサスペンスが展開する。
前作では、若者たちが孤独な盲目の老人を過小評価して家に忍び込んだところ、逆に恐怖のどん底に陥れられるという衝撃の展開だったが、今回はガラリと設定を変えて物語は進む。
たが設定は違えど、観客に緊張と衝撃を与える存在として、盲目の老人はまたもや唯一無二の存在感を発揮する。
矛盾するようだが、安定してこちらを不安な気持ちにさせてくれるのだ。
老人が凶暴な過去を隠して現在は少女を大切に育てていて、その少女が誘拐されてしまうといった状況は、あのランボーシリーズ完結策の『ランボー ラスト・ブラッド』を連想させる。
前作で観る者を恐怖に陥れる悪役が次作で主人公側につくという点は、名作『ターミネーター2』を彷彿させる。
少女を誘拐した輩にとって分が悪すぎると言わざるを得ない、旋律の反撃の描写は、まさにリーアム・ニースンの『96時間』と同じだ。
着想を得ていそうな作品を挙げるとキリがないが、狂暴すぎるアメリカ老人版『座頭市』みたいな老人が、何よりも大切にしている少女を連れ去った血も涙もない謎の武装集団に挑んでいく様子は、まさに劇薬で劇薬で制すような過激さだ。
そして、一体何を見せられているんだろう、と途中で我に返りそうなほどに、途中からまともな人間がほとんど出てこない。。。(少女はいい子でまともなのだが、日常的にまともとは言えない訓練を受けているのだ)
決して音を立ててはならない、という意味で、ドント・ブリーズ(息をするな)と付けられたタイトル。
前作ではどんな小さな音にも耳を澄ませていた老人が、今回は武装集団から少女を匿うために少女に音をたてないように注意する。
一方で、老人が、息をしろ!と痛切に叫ぶ圧巻のシーンもあったりする。
息の音に聞き耳を立てたり、音を立てるなと言ったり、息をしろと言ったり、何かと忙しいが、とにかく蝉の声もうるさく蒸し暑いこの夏、冷房が効いた映画館で観れば身も心もヒンヤリできること間違いなしの1本だ。