紀里谷和明監督・脚本の映画『世界の終わりから』が全国順次公開中だ。紀里谷監督が“最後の作品”と宣言している本作は、“世界の終わり”と、それを救うため奔走する一人の女子高生の物語。その主人公のハナ役を力強く演じた演じた伊東蒼にインタビューした。
―今回の作品は、観る人がどういう人生を経たかで受け取るものも変わりそうな作品ですが、感想はいかがでしたか?
CGなどが入った完成版を観て撮影の時にはわからなかったことが「こういうことだったのか」と初めてわかりました。ハナは大変なこと、悲しいこと、辛いことが多く、撮影中はわたしもその感情に常に引っ張られて、すごく辛かったこともあり、大変だったシーンを思い出して、見終わってからも涙が止まりませんでした。もう一回観たいなと思うくらい、冷静には観られなかったです。
―紀里谷和明監督は、どのような説明をされたのですか?
わたし自身は世界の終わりという、すごく大きなテーマを扱った作品で、飛翔体が落ちて来るとか、SFみたいなものを想像していたのですが、でもそうじゃなく、本当に身近な話なのだと監督はずっとおっしゃっていました。ハナが世界の終わりを止めるという大きなお話ですが、この映画が伝えたいことは、自分はひとりじゃないということなのかなと思いました。
わたしたちは、そばにいる人に少し気持ちを向けるだけで、その人が救われたり、ひとりぼっちに感じている人をちょっと安心させたりすることができると思うんです。誰かのために自分ができることを行動にうつすことが大事だと、この作品を通して感じることができました。監督が言っていたそんなに大きな話じゃないということは、そういうことなのかなって思っています。
―現場の雰囲気はいかがでしたか?
何をしていてもセリフが出てくるようじゃないと、いいお芝居が出来ないでしょう、と撮影に入る前にリハーサルを何度も行ない、しっかり練習をする現場でした。もちろん普段からそうしているのですが、いつも以上にちゃんとセリフを入れた上で、シーンのつながりも意識してほしいと言われていたので、一回のシーンをやるにしても、前のシーンから台本を読み、何があったか、何を思ったか、そこをより気にして撮影していました。
―演じられたハナのキャラクターについては、どのように理解しましたか?
普通の女子高生、女の子なんです。映画を観てくださった方もそう感じられると思います。ただ境遇や置かれている状況が普通に比べて大変なことが多いだけなんです。最初は心が暗い子かなと思っていたのですが、そうじゃなくただ、世界の終わりに翻弄されて、苦しんでる女の子なのだと思います。
―今回の撮影を経て、自分自身の中で何か変化は感じましたか?
強くなったと思います。始まる前に何度かリハーサルをした時は、夏を超えられるかすごく不安になり、「もうできないかも知れない」と思いながら、家に帰ったこともありました。撮影が始まってからも毎日不安な気持ちはありましたが、ハナの家に行って衣装を着ると、自分の中のハナが大きくなっていって。全部が終わった後、強くなれたと自分で思うことができました。
あと前までは伊東蒼として悲しい気持ちを想像していたのですが、最近は役としてのその場の感情で涙が出てきたりするんです。特に『さがす』以降、自分の中で、ちょっと変われたところなのかなと感じています。
―最後になりますが、映画を待っている方へメッセージをお願いいたします。
この作品は自分がひとりぼっちではないことに気付かせてくれ、自分が少し動くだけで誰かの孤独を埋めることができると思わせてくれる作品作品だと思います。観てくださった方にとってこの作品が動くきっかけになり、少しだけ強く優しい気持ちになってもらえたら。そんな思いがひとりにでも届けば、ハナが頑張った意味はあると思います。
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全国順次公開中