【レビュー】映画館で大きな映画愛に包まれよう―『ストーリー・オブ・フィルム 111の映画旅行』

まるで映画の美術館のような作品が公開中だ。

監督はスコットランドのドキュメンタリー監督マーク・カズンズ。

映画に魅了された彼は、今でも1日1〜２本を観ており、何とこれまで観た作品の数は1万6000本に及ぶらしい。

彼の映画への想いはとどまるところを知らず、日本の往年の名女優、田中絹代のサインを模したタトゥーを自身の腕に入れているほどだ。

そんな紛れもない映画狂の自著「The Story of Film」が世界的に絶賛されると、同名のテレビシリーズが制作・公開された。

その続編に位置付けられるドキュメンタリー作品が本作となる。

2010年から21年にかけて公開された合計111作もの映画が取り上げられられ、内容の比較・分析や映像技術の進化が語られる。

『ジョーカー』
『アナと雪の女王』
『ブックスマート　卒業前夜のパーティーデビュー』
『ミッドサマー』
『イット・フォローズ』
『アス』
『タンジェリン』
『マッドマックス　怒りのデス・ロード』

とにかく語られる作品群がどれも素晴らしく、切り抜かれた映像とともに過去に観た時の感動や興奮が鮮やかに蘇ってくる。

ナレーションはほぼ全てマーク監督の主観に基づくものだが、妙に納得する部分も多く、監督自身がボーダレスと言い切る世界中の映画が時間と場所を超越してリンクしていくような感覚と新鮮な驚きを覚える。

また、監督のそんな語り口に浸っていると、まだ観ていない映画については一刻も早く観てみたいという気持ちにさせられる。

この作品で言及された全映画のリストがどこかに出回ってないか、是非後で探してみたいくらいだ。

今では映画館に行かなくても自宅や外出先であらゆる配信サイトで映画を楽しめるようになった。

直近10年間の名作を振り返ってこれから観るリストに追加するのもよし。

数々の感動作の雰囲気にただ贅沢に浸り切るのもよし。

映画館のシートに身を埋めてどっぷりと大きな映画愛に包まれる体験は他では代え難い。

毘沙門天華男

映画、旅、ボクシング、読書、絵を描くこと、サウナ、酒が趣味の福岡出身の多動性中年。このプロフィールを書いてる途中もドラクエウォークをしています。

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