『デッドプール』のライアン・レイノルズ主演で贈る本作品、爽快感を楽しめるこの夏ぴったりのアクションコメディに仕上がっている。
主人公のガイは銀行窓口係を務める平凡な男、毎朝部屋の金魚に餌をやり、いつものカフェで同じコーヒーを注文してから通勤する、そんな同じ日が毎日続いている。
ただ、何故か毎日職場の銀行は強盗に襲撃され、そもそも街自体に常時おかしいくらい暴力が溢れているのに、住民は誰しも疑問を持たずこの状況を受け入れている。
それもそのはず、彼らが住む街は、オンライン参加型アクションゲーム「フリー・シティ」、つまり現実には存在しないゲームの世界であり、そんな世界にこれまで疑問を持たなかった主人公を含む住民たちは皆ゲームのモブキャラ(背景キャラ)だったのだ。
そんな中、主人公ガイは、魅力的な謎の女性との出会いを契機に、自らがゲームのモブキャラであることに気付き、それでも自分自身が変わることを決意して、プログラムされたゲームのルールも無視して勝手に街の平和を守ろうとし始める…
ゲームの中のキャラクターを主人公とする映画には名作も少なくない。
中でもゲームキャラとしての葛藤も描いたアニメ『シュガーラッシュ』、VRワールドでの冒険を描いた『レディ・プレイヤー1』などはその新規性に富んだ設定等から広く話題を集めた。
本作品はこれらの名作を踏襲しつつも、さらにオリジナリティを加えて、自己変革・自己実現のポジティブなメッセージを明確に押し出している。
そのオリジナリティの中でも決定的な点は、何といっても主人公がモブキャラであるというそもそもの設定だ。
『シュガーラッシュ』のように人気が落ち目のゲームのキャラクターなどではなく、何と没個性で操縦性ゼロの背景キャラが主人公なのだ。
この悲哀感すらある物語のスタート地点があるからこそ、映画の終盤の盛り上がりとの落差もその分大きくなる。
ネガティブに陥ることなく自分なりに前進することを止めない主人公、その真っすぐな性格や笑顔はライアン・レイノルズの真骨頂、まさにハマり役だ。
同時にゲーム「フリー・シティ」の開発に絡む現実世界の人間たちの行動や関係性にも注目したい。
平凡な存在でも決意と行動次第で世界を変えられる、という強い人間賛歌のメッセージ。
このメッセージが仮想、現実かかわらず1つの世界の枠すらも超えて溢れ出していく様は、とても痛快で、不思議なロマンチックさを伴っていた。
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