【レビュー】閉塞感に包まれた灯台の中で培養される二人の男たちの狂気―『ライトハウス』




時は1890年代。舞台はニューイングランドの孤島。

登場人物は2人。

全編モノクロの不気味な雰囲気。

『ミッドサマー』などで有名な制作・配給会社のA24から閉塞感と狂気に満ちたスリラーが届けられた。

絶海の孤島にある灯台を管理するため2人の男が派遣された。

癖が強くて口の悪いベテランのトーマスに名優 ウィレム・デフォー。

秘密を抱えた新人のイーフレイムに昨今活躍著しいロバート・パティソン。

2人に与えられた灯台守としての業務の任期は4週間。

当初からイーフレイムをいびるトーマスと、そんなトーマスに不満を募らせていくイーフレイム。

やがて激しい嵐に襲われた島で孤立化してしまった2人はじわじわと狂気に心を囚われてしまい、対立と同調を繰り返しては夢とも現実とも区別がつかない世界を垣間見るようになる。

もとより灯台の光に取り憑かれて高圧的な振る舞いを見せるトーマスと、トーマスの言動を訝しみながら灯台の謎への興味を募らせていくイーフレイム。

孤島の中の灯台の内部というそもそもの限定された状況が嵐の襲来によりさらにその閉塞感を増していく。

雨風や高波の激しさに呼応するかのように2人の男の心のたかも外れていく様子は見応えたっぷりだ。

遠く沖に出た船からは航路の道標となる、言わば安堵の象徴とも言える灯台。

そんな灯台がその管理者である灯台守たちの心を完全に狂わせていくというのはある意味で皮肉だ。

灯台下暗し、との言葉もあるが、灯台の中で繰り広げられるこの狂気のドラマは一体何と形容すればいいのだろう。

自分にはまるで灯台は大きな1つの墓に、2人の灯台守はミイラ取りのように思えてしまった。

 

『ライトハウス』

■監督:ロバート・エガース
■脚本:ロバート・エガース/マックス・エガース 
■撮影:ジェアリン・ブラシュケ
■製作:A24 
■出演:ウィレム・デフォー、ロバート・パティンソン

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毘沙門天 華男
映画、旅、ボクシング、読書、絵を描くこと、サウナ、酒が趣味の福岡出身の多動性中年。このプロフィールを書いてる途中もドラクエウォークをしています。