【レビュー】天才たちの電気を巡るビジネス戦争―『エジソンズ・ゲーム』




今や世界でその名を知らない者はいない天才発明家エジソンと、アメリカ産業の発展に大いに貢献した実業家のウェスティングハウス。

1880年代のアメリカで、この2人が送電システムのあり方をめぐって繰り広げた熾烈な戦いを描いたのがこの映画。

エジソンは直流送電システムを主張し、一方ウェスティングハウスは交流送電システムを主張。

一歩も譲らない2人の”電流戦争”は、電気椅子による死刑制度や発明家テスラというまた別の才能をも巻き込みながら、シカゴ万博による決着へ向かう――。

エジソン役にベネディクト・カンバーバッチ、「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」では当時解読不能と言われた暗号を破る天才を演じた彼が、今回は同じ天才でも仕事に没頭して頑なに自分を曲げないとっつきにくい天才を見事に演じている。

もう1つおまけに付け加えると、エジソンの助手役はトム・ホランド

この2人が揃うと、ドクター・ストレンジとスパイダーマンのMAVELコンビを連想する人もいるかもしれない。

当時から庶民の人気者だったエジソンはもちろん今の日本でも有名だ。

これは原題が「THE CURRENT WAR」(現在の戦争)であるのに対し、邦題が「エジソンズ・ゲーム」となっていることからも十分に察しがつく。

もっとも、ウェスティングハウスも人気度では敵わないものの、社会への確かな貢献度では決してエジソンに引けを取らない。

本作は、世紀の発明に至る努力の過程や発明の瞬間の感動を描いた類の映画ではない。

むしろ発明の存在を前提として、当時の天才たちが電気の普及の初動を巡ってどのようなシビアな争いをしていたか?どのような駆け引きをしていたのか?

そのビジネス戦争の現実を贅沢に覗き見ることのできる、まさに大人の娯楽作だ。

 

映画『エジソンズ・ゲーム』 あらすじ

19世紀、白熱電球の事業化を成功させたトーマス・エジソンは天才発明家と崇められ、大統領からの仕事も平気で断る傲慢な男だった。
裕福な実業家ジョージ・ウェスティングハウスは、大量の発電機が必要なエジソンの“直流”より、遠くまで電気を送れて安価な“交流”の方が優れていると考えていた。若手発明家のテスラも、効率的な“交流”の活用を提案するが、エジソンに一蹴されてしまう。
ウェスティングハウスは“交流”式送電の実演会を成功させ、話題をさらうとそのニュースにエジソンは激怒。
“交流”は危険で人を殺すと、ネガティブキャンペーンで世論を誘導していく。こうして世紀の“電流戦争”が幕を開けた──果たしてこのビジネスバトルを制するのはどちらか?

■監督:アルフォンソ・ゴメス=レホン
■出演:ベネディクト・カンバーバッチ、マイケル・シャノン、トム・ホランド、ニコラス・ホルト
■配給:KADOKAWA edisons-game.jp

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毘沙門天 華男
映画、旅、ボクシング、読書、絵を描くこと、サウナ、酒が趣味の福岡出身の多動性中年。このプロフィールを書いてる途中もドラクエウォークをしています。