【レビュー】追い詰められた若き兵士たちの明暗を分ける乾坤一擲の砲撃『デンジャー・クロース 極限着弾』




ベトナム戦争におけるオーストラリア軍の中隊108人とベトコン2000人との間の戦闘「ロングタンの戦い」。

この壮絶な戦闘の実話を映画化したのが本作だ。

その歴然たる兵士数の差からも容易に想像できるとおり、主人公らオーストラリア軍中隊はほどなくベトコンに集中攻撃を受けて動けなくなり、まさに絶体絶命の状況に陥る。

圧倒的な窮地を描いた戦争映画の傑作はこれまでにも作られてきた。

ソマリア戦争で敵地ど真ん中に墜落したアメリカ軍のヘリ救出を描いた『ブラックホーク・ダウン』

アフガニスタンで大勢のタリバン兵に囲まれてしまったシールズの壮絶な戦闘を描いた『ローン・サバイバー』

第二次世界大戦、ドイツ軍に包囲された英仏連合軍の海からの大胆な救出劇を描いた『ダンケルク』

本作は、その悲惨な窮地ぶりをリアルに眼前に突きつけてくるという点で、これらの傑作にも決して引けを取らない。

次から次へと終わりなく迫ってくるベトコン、ひと時も心休まらない緊迫した戦闘シーン。

ついに最後の手段として、自ら巻き込まれる可能性の高い至近距離への砲撃「デンジャー・クロース」が要請される。

その自殺行為にも等しい無謀な砲撃を自ら選択しなければならないほどの極限状態、それは想像を絶する窮地・・・

中隊を構成する兵士たちは、ほとんどが経験の浅い徴収兵で平均年齢21歳という若さ。

そんな彼らが最後まで諦めず戦い、必死に仲間を救おうとする――その驚異的な意志と勇気が激しく心を打つ

また、中隊長と二等兵の確執と心の交流もこの映画の見どころの1つだ。

程度の差こそあれ人間生きていると必ず突き当たる様々な逆境。

この映画を観終わると、「逆境」という言葉の持つ意味が以前に増して重くなるに違いない。

 

『デンジャー・クロース 極限着弾』

■監督:クリフ・ステンダーズ
■脚本:スチュワート・ビーティ
■出演:トラヴィス・フィメル、ルーク・ブレイシー、リチャード・ロクスバーグ ほか

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