最近70年代を舞台にした映画を目にする機会が多いが、本作はそんな中でも真夏にぴったりの超刺激的なホラーだ。
複数の若い男女を恐怖に陥れるのは1組の老夫婦。
完全にどうかしてる爺さん婆さんの動向に目が釘付けになる。
個人的に老人ホラーのジャンルを切り開いたのはサム・ライミ監督作『スペル』(2009年公開)だと思っている。
入れ歯がホラー映画のアイテムになるとはそれまで思ってもみなかった。
ただ、本作は『スペル』のように老婆1人がヤバいのではない。
『ドント・ブリーズ』のようにお爺ちゃんだけが異常に恐ろしいというのでもない。
1人ではなく2人、それも老夫婦というのがポイントなのだ。
というのも、これに呼応するかのように老夫婦が餌食として狙う男女もまた3組のカップルだからだ。
3組のカップルが映画の撮影のために訪れた家を管理しているのが問題の老夫婦だった、という設定なのだが、合計4組の男と女の恋愛感情の絡みがまたホラーに最高のスパイスを加える。
ホラー映画では「若い男女が不謹慎厭わずエロいことをしようとすると、殺人鬼やらゾンビやらの犠牲になるフラグ」みたいなものが昔から存在する。
ただ、この映画はそういう1シーンを取り込んでみた、というのではなく、むしろ全編そんな要素で成り立っているから何とも潔い。
男女の心の機微さえもホラーを盛り上げる材料にすぎないと言わんばかりに、物語は容赦なく怒涛の展開を見せる。
途中で抱くことになるどこか切ないような感情さえも、目が覚めるようなホラー描写と相まって、興奮に転化され、つい笑ってしまいそうになる。
ちなみに本作は3部作のシリーズとなることが発表されており、次作は本作の前日譚となる予定とのこと。
この老夫婦ならどんな時代の姿でも見てみたい。
もう今から楽しみでしかたない。
©2022 Over The Hill Pictures LLC All Rights Reserved.