俳優のみならず声優としても高い評価を得ている川栄李奈が、全国公開中の映画『サマーゴースト』で“幽霊”の佐藤絢音役を務めた。気鋭のイラストレーターloundrawが監督を、安達寛高(乙一)が脚本を務めるオリジナル短編アニメーション作品で、それぞれ誰にも言えない悩みを抱えた3人の高校生と幽霊との、忘れられない“ひと夏の出逢い”を繊細に描いた好編だ。川栄に本作や仕事のことをはじめ、さまざまな話を聞いた。
―今回の作品ですが、最初にオファーが来た時はいかがでしたか?
これまでにも声優のお仕事は何回かやらせていただいているのですが、それでも経験豊富とまでは言えないので、ありがたいなと思いました。声のお仕事がいただけることは、本当にうれしいです。
―声優の仕事は今回で6度目ですが、やってみていかがでしたか?
毎回本当に勉強になると言うか、自分の中の学びはとてもあるのですが、毎回緊張しますし、「これで大丈夫なのかな?」と毎回思います(笑)。
―今回は幽霊の少女の役でしたね。物語の印象はいかがでしたか?
内容的には背中を押してもらえるようなお話ではあるのですが、でも「頑張れ!」という声高な感じではなく、今の若い子に寄り添った、一歩ずつ、少しずつ自分を見つけていくような内容だと思いました。わたしも20代なので、共感できるところは多かったです。
―なるほど。共感したセリフやシチュエーションは何でしょうか?
わたしの役は主人公の男の子の杉崎友也くんと一緒にいることが多いのですが、その中で自分に問いかけるような場面が多かったことがとても新鮮でした。これまで幽霊というキャラクターを演じることもなかったのですが、観てくださる方もきっと共感していただけると思いました。
―ファンタジーですが、テーマはリアルで伝わりやすいですよね。
みなそれぞれ悩みを抱えていて、その悩みは現代の若者も抱えているようなものなんですよね。いじめだったり、大人の言うことをずっと聞きながら生きていることみたいな、とても身近に感じられる悩みが、この作品ではよく出てきます。そういうことに対して今の若い子は「もういいや」と諦めている感じで生きていることが少なくないと思うのですが、ほんのちょっとでも仲間との出会いなどで人生が変わったりすることもあると思うんです。この作品を観て一歩踏み出す力みたいなものをもらうと言うか、そういう風に感じてもらえたらうれしいなと思います。
―ご自身も作品を観て勇気をもらったような経験はありますか?
あります。わたしは単純なので、連続ドラマの5話目だけを観て元気や勇気をもらってしまうほどです(笑)。映画やドラマは、観ていると自然と勇気や力になると思うんです。わたし自身、この主人公みたいに流れで生きているような感じだったので、よくわかります。ただ、自分の意思を伝えることも大切だけれど、すぐ変わることは無理だから、徐々に一個一個課題を解決して、よりよい環境で暮らせたらいいなと思いました。
―ちなみに人生を豊かにするという意味で、今ハマッているものはありますか?
趣味や特技が本当に一切なくて何も趣味はないのですが、今回すごく感じたことは、監督のloundraw(ラウンドロー)さんが同い年で、同い年なのに絵も描かれていて、いろいろなことをされていることがとても刺激になりました。自分には何も得意なことがないし、人より優れているものもないのに、すごい頑張っている人もいて。そういう人とお仕事ができると、自分も「頑張らなくちゃ!」と思う。何かしなくちゃと思うんです。
―そうすると理想の俳優、その条件などは、どう考えますか?
お芝居の面ではみなさん本当に上手く、技術がすごいので、わたしが出会って素敵だなと思う人は、立ち居振る舞いが素敵で、謙虚な人、礼儀もきちんとできている人ですね。やっぱりそういう方たちは、いろいろな作品に出ているし、現場でも好かれていると思います。なので、わたしも人間的な面できちんとしていたいなと思います。
―ちょっと早いですが、いずれ30代になった時の目標などはありますか?
30代になったら、もっといろいろな役ができるのかなと思っています。今は20代後半ですが、難しい歳だなと感じていて、たとえば女子高生を演じるのであれば、もうちょっと若いほうがいいけれど、母親役にしてはまだ若い。難しい年齢だろうなと自分でも思うので、30代・40代になれば、本当に幅広い役を演じられるのかなと思っています。
(c) サマーゴースト
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