【レビュー】限界突破のキャリー・マリガンが突きつける痛烈なメッセージ―『プロミシング・ヤング・ウーマン』




世に蔓延する性差別・偏見を断罪する劇薬のような映画だ。

一方でキュートなキャリー・マリガン主演で贈る一流の復讐エンターテインメントでもある。

これはもはや事件だ。

タイムリーなテーマを旬の女優がキャリア最高とも言える演技で届けるのだから、もう映画館に駆けつけるしかない。

マリガン演じるキャシーは昼間はカフェの店員として働き、夜は酒場で泥酔したふりをして自分をお持ち帰りする男たちに制裁を加えていた。

実はキャシーは過去に医者を目指していたが、ある理由で医大を中退していた。

前途有望だったキャシーは何故中退して医者の途を諦めたのか。

キャシーが自らに課す義務のように夜ごと遊び人狩りを行うのは何故なのか。

そんな中、キャシーは大学同級生だったライアンと偶然出会い、互いに想いを寄せることになる。

他方で彼の出現は図らずしもキャシーを過去に舞い戻し、その怒りのギアをさらに上げてしまう。

こうしてキャシーの復讐劇が本当の幕を開ける。

キャシーに起こった過去の出来事に触れながらも、その全てまでは描かない構成が素晴らしい。

その行間はキャシーの怒りと行動そのものによって十二分に想像できるからだ。

人間は得てして自分あるいは自分が愛する者が受ける傷には敏感だが、他人の傷には鈍感だ。

この映画は、そんな全ての鈍感な人間に対してキャシーが突きつけるメッセージだ。

そこにあるのは、目も覚めるような一切の妥協を許さないシンプルな問いだ。

映画を見終わったあなたは加害者か?被害者か?それとも傍観者か?

キャシーのぶれない怒りと行動力の前で、あなたは自分自身の立場を問い質されるだろう。

 

『プロミシング・ヤング・ウーマン』

■脚本・監督:エメラルド・フェネル
■編集:フレデリック・トラヴァル
■出演:キャリー・マリガン、ボー・バーナム、アリソン・ブリー他

©2020 Focus Features, LLC.
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