チェコ発の驚くべき実験的ドキュメンタリー作品が公開されている。
見た目が幼く見える成人女性3人を「12歳の少女」という設定でSNSで友達を募集させたら果たしてどんなことが起きるのか。
その10日間にわたる様子にカメラが迫る。
結果、期間中に彼女たちに群がった成人男性の数はなんと2458人。
少女を自身の性欲のはけ口にする男たちの言動の異常さが次々と明らかになる。
インターネットにおける子供の性被害が世界的に問題化している今日、頻繁にニュースで目にする事件もどこか遠い他人事のように感じていないだろうか。
経験も浅い若い子供たちが異常な大人の性欲の道具として消費されていく事件は後をたたない。
しかし、そのような事件すら単に一時的に世間の注目を引くニュースとしてまた世間で「消費されていく」。
他方でこの映画の実験的試みは、斬新かつシンプルな方法で子供たちの性被害に正面から向き合うものだ。
強烈な現実をまざまざと伝える映像のパワーは観る者を少女たちの立場に立たせ、決して単なる他人事では終わらせない。
その意味で本作は究極の追体験型映画と言ってもいいかもしれない。
苦笑い、嫌悪感、事態の深刻さ、あらゆる感情や想いが押し寄せてくる中で、ある1つのシーンでは唐突に心を打たれてしまう。
そして、何故自分が感動したのかその理由を冷静に考えてみると、改めてネット社会に巣食う大人の病理の根深さに気付いてしまうのだ。
実際にチェコの警察までを動かした本作の映像の力、現実の衝撃度。
今存在するこの世界を頭だけでなく心で理解するための映像体験として、全ての人に見てほしい映画だ。
『SNS-少女たちの 10 日間-』
■監督:バーラ・ハルポヴァー、ヴィート・クルサーク
■出演:テレザ・チェジュカー、アネジュカ・ピタルトヴァー、サビナ・ドロウハー
■配給:ハーク
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