【レビュー】全てを奪われた女の美しくも残酷な復讐の追跡劇―『ナイチンゲール』




舞台は19世紀鬱蒼と森が生い茂るイギリス植民地時代の流刑地・オーストラリアのタスマニア島。

女性や黒人、原住民が虐げられ非道の限りを尽くされていたこの島で、強権的なイギリス人将校に強姦され、目の前で愛する夫と子供を殺されたクレアは、哀しくも怒りに満ちた復讐の追跡劇を開始する――。


※ナイチンゲール【nightingale】 :ヒタキ科ノゴマ属の鳥。鳴き声が美しいことで知られる「サトナキドリ(小夜啼鳥)」の別名。早朝・夕方や月明かりの夜などによく鳴く


アイルランドにルーツを持つ元女囚の彼女は、自らの尊厳をかけて立ち上がる。

彼女を襲う死に等しいような仕打ちも、その命がけの復讐も、目を逸らしたくなるほどに過激に描かれており、この点にこそ「一切から目を逸らすな」という監督の本気度と強いメッセージを感じた。

追跡の旅を案内することになる先住民アボリジニの青年・ビリーの存在も大きい。

彼もまた別の差別と虐待の被害者であり、意思の隔絶や反目を超えて2人が共感していく姿はこの映画の大きな見どころの1つ

狭い鳥かごに閉じ込められ歌うことを強いられていた鳥が、自らの強い意思で歌い始める瞬間――。

その強く美しい姿は、この世界で虐げられたことのある全ての人の心を揺さぶるに違いない。

 

『ナイチンゲール』 あらすじ

19世紀、オーストラリアのタスマニア地方。けちな盗みを働き流刑囚となったアイルランド人のクレアは、その美しい容姿と歌声から、一帯を支配する英国軍将校ホーキンスに囲われていた。クレアの夫エイデンは、彼女が刑期を終えた後も釈放されることなく、拘束されていることについてホーキンスに交渉を試みる。しかし、逆上したホーキンスはクレアを仲間達とレイプした挙句、彼女の目の前でエイデンと子供を殺害してしまう。尊厳を踏みにじられ、愛する者達を奪われたクレアは復讐を決意する――。

■監督・脚本:ジェニファー・ケント
■製作:クリスティーナ・セイトン / ブルーナ・パパンドレア
■出演:アイスリング・フランシオシ、サム・クラフリン、バイカリ・ガナンバル 他
■配給:トランスフォーマー

© 2018 Nightingale Film Holdings Pty Ltd, Screen Australia and Screen Tasmania.

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毘沙門天 華男
映画、旅、ボクシング、読書、絵を描くこと、サウナ、酒が趣味の福岡出身の多動性中年。このプロフィールを書いてる途中もドラクエウォークをしています。