【レビュー】高度2500mの上空で迫り来る危機の連続—クロエ・グレース・モレッツ主演作『シャドウ・イン・クラウド』




地上の遥か上空で巻き起こるピンチを描いたスチュエーションスリラーは、秘密を抱える一人の女性に焦点を当てたサスペンスアクションでもある。

第二次世界大戦中の1943年、ニュージーランドからサモアへ飛ぶ予定の連合国空軍のB-17爆撃機に、女性大尉モード・ギャレットが乗り込んでくる。

予定外の乗客である彼女は最高機密を届ける密命を受けたと説明するが、男だらけの乗組員たちに出だしから冷やかされ、機内での居心地は最悪だ。

そんな中、飛び立った爆撃機が上空で謎の怪物に突然襲撃され、雲の切間からは日本軍の零戦が現れて攻撃してくる。

八方塞がりの状況を必死に乗り切ろうとするモード大尉を演じるのは、10代の頃出演した『キック・アス』のヒット・ガール役で人気に火がついたクロエ・グレース・モレッツ

20代半ばに差しかかって大人の魅力も増した彼女が、次から次へと降りかかる災難に振り回される悲痛な姿とこれに懸命に対応しようとする気丈さをのびのびと演じ分けている。

監督はニュージーランドのロザンヌ・リャン

『エイリアン2』からもインスピレーションを得たらしいが、この映画の怪物はエイリアンほど絶望的に凶暴な怪物ではないところが可笑しかったりもする。

同じエイリアンでもかなり前に『エイリアンVSヴァネッサ・パラディ』という異色SFがあったが、ヒロインをひたすら愛でる作品という意味だけで言えばむしろそっちに近いかもしれない。過去のトンデモ映画と勝手に並べるたりすると怒られるかもしれないが。。。

「クロエちゃんに対して、セクハラも厭わない不躾な男たちや日本の零戦や空飛ぶ怪物を全部ぶつけてみたら、ますますその魅力が映えるのでは?」

監督がそのように少なくとも深層心理で考えていたとしても何にも不思議ではない。

実際、彼女の凛とした表情は想像してた以上に「災難」と相性がいい(どんな言い回しなんだか)。

クロエPV的な要素が大きいとはいえ、映画は第2次世界大戦で従軍した女性兵士たちへのリスペクトもしっかりと捧げている。

孤軍奮闘に近い状態で降りかかる火の粉を払うモード大尉。

彼女は、今よりもっと女性の地位が低かった時代に男だらけの戦争の世界であらゆるものと戦わざるを得なかった女性たち全員の代表者なのだ。

 

『シャドウ・イン・クラウド』

■監督:ロザンヌ・リャン
■出演:クロエ・グレース・モレッツ、ニック・ロビンソン、ビューラ・コアレ、テイラー・ジョン・スミス

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