【レビュー】アメリカという概念そのものを描いた革命的作品『アス』

【レビュー】アメリカという概念そのものを描いた革命的作品『アス』




監督デビュー作となった『ゲット・アウト』がアカデミー賞作品賞&監督賞&脚本賞&主演男優賞にノミネートされ、アフリカ系アメリカ人初の脚本賞を受賞、一躍時代の寵児となったジョーダン・ピール。

全世界が待ちわびた新作が、この『アス』だ。
テーマはドッペルゲンガー。主人公・夫・ふたりの子供という4人家族の前に、ある日自分たちとそっくりの4人組が現れる。「お前たちは誰だ?」と尋ねると、その「影」は「私たちはアメリカ人だ」と応える──。

『ゲット・アウト』で描かれた人種問題のみならず、今作ではもっと踏み込んでアメリカという国の複雑な構造・事情が描かれている。
さらに言うと、「自らの人生とは」、「自分という存在とは何か」という、きわめて根源的な問いにまで言及されているのが本作だ。

それが、あらゆる画角、演者の表情、カット割り、音楽が入るタイミングと選曲(N.W.A.の“Fuck Tha Police”の使い方が特に最高)、セリフ、ファッション……すべての要素が完璧な中、とびきりキレ味鋭いブラックユーモアを交えて進行していく。

原題の『Us』は、アメリカ(US)と私たち(US)の両方の意味をはらんでおり、ジョーダン・ピールが敬愛するチャイルディッシュ・ガンビーノことドナルド・グローヴァーは、“This is America”、そして映画『Guava Island』で「アメリカは概念だ」と言ったが、その「概念」そのものの映画がこの『アス』である。間違いなく革命的作品。

 


映画『アス』 あらすじ

1986年、カリフォルニア州サンタクルーズ。子供だったアデレードは両親とビーチにある遊園地へ出掛けるが、ふとしたきっかけで迷子になってしまう。いつの間にか、“ビジョン・クエスト”という名前のミラー・ハウスに迷い込むアデレード。
しかし、鏡の迷路に映っていたのは自分ではなく、自分とそっくりな少女だった・・・。

そして現在、大人になったアデレードは夫のゲイブ、娘のゾーラ、息子のジェイソンと共に夏休みを過ごす為、幼少期に住んでいたサンタクルーズの家を訪れる。

友人家族と一緒にビーチへ行くが、目を離した隙にジェイソンを見失ってしまう。
やがて、無事にジェイソンを発見するが、“何かがおかしい”と感じ始め、家族の身に恐ろしい事が起こるという妄想を強めていく。
その夜、家の前に自分達とそっくりな“わたしたち”がやってくる・・・。

監督・脚本・製作 : ジョーダン・ピール
製作       : ジェイソン・ブラム
出演       : ルピタ・ニョンゴ、ウィンストン・デューク、エリザベス・モス、ティム・ハイデッカー
シャハディ・ライト・ジョセフ、エヴァン・アレックス、カリ・シェルドン


©Universal Pictures

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