【レビュー】現代のアクション映画の集大成的な傑作―『グレイマン』




アクション映画はこんなところにまでたどり着いた。

純粋なアクションを見ながら涙が溢れ出そうになった経験は過去に思い出せない。

『007』や『ミッション・インポッシブル』シリーズよりクールな工作員たちが登場し、『ワイルド・スピード』を超えるカーアクションがあって、『ジェイソン・ボーン』シリーズ顔負けの体術が披露される、と聞いたら少し興味を持ってもらえるだろうか。

ケレン味のないアクションシーン、キャラクターの尖り具合、縦横無尽に動き回るカメラワーク、2時間を超える尺を飽きさせない怒涛の展開、緊張感を高める音響。

『アベンジャーズ エンドゲーム』でも知られるルッソ兄弟が監督し、Netflix史上最高予算と言われる製作費2億ドルが使用された本作には紛れもなくアクション映画の神様が降臨している。

「グレイマン」とはその正体を誰にも知られない優秀なCIAの工作員の通称だ。

今や数少ない「グレイマン」のシックス(ライアン・ゴズリング)は組織の秘密を知ってしまったことから、逆に組織に命を狙われることになる。

組織に雇われシックスを追い詰める非常な工作員ロイド・ハンセンに『キャプテン・アメリカ』シリーズで知られるクリス・エバンスが、シックスに協力する工作員ダニ・ミランダに『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』への出演も話題になったアナ・デ・アルマスが扮する。

組織から与えられたミッションに挑むというわけではなく、組織から命を狙われる危機を何とか生き延びようとするというストーリーは、『ジェイソン・ボーン』シリーズに類似する。

工作員同士の激しい攻防からとにかく目が離せない。

特に非情でルール無しのロイドがシックスを仕留めるために暴走していく様子は否応なしに緊張感を増大させる。

一方で、ロイドの下衆なキャラクターやセリフは『キャプテン・アメリカ』のセルフパロディ満載で遊び心にも余念がない。

また、殺し屋同士が周囲を巻き込み街を破壊しながらド派手な追走劇を行う点は韓国ワールアクション『ただ悪より救いたまえ』も彷彿させる。

アナ・デ・アルメスのクールな魅力も最高に発揮されている。

美貌とアクションと少なめの鋭いセリフ、とにかく無駄がない。これはもう見せ方を完全に知っている。

『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』への出演は本作のための単なるウォーミングアップだったのでは、と思えるほどに本作での存在感は凄い。

ルッソ兄弟もしくは製作陣の映画愛は細かいシーンにも宿っている。

いろんな作品(主にアクション映画)へのオマージュ・パロディが散りばめられ、そのサンプリングが実に自然で見事なので、本作はアクション映画の集大成のような贅沢さを持つに至った。

安易に恋愛にも流れず、しつこいギャグも挟まず、過去のあるキャラクターに時々最高の名台詞を言わせて、ただただ洪水のようなアクションに身を投じさせる。

東京都内にはブーストサウンド上映を行ってる映画館もあるが、是非とも大音響と大画面でこの至福のアクション映画に身を委ねてほしい。

 

■Netflix映画『グレイマン』独占配信中