【レビュー】ままならない人生のリアルを刺激的に最高の共感度で魅せる―『わたしは最悪。』




ノルウェーはオスロを舞台にした恋愛?映画が世界で旋風を巻き起こしている。

監督はデンマーク出身の名匠ヨアキム・トリアー

監督の10年前の作品で脇役を演じたレナーテ・レインズヴェに当て書きした脚本で彼女を映画初主演に据えた。

映画では彼女が演じるユリヤの不完全で真っ直ぐな振る舞いの魅力が圧倒的な共感を誘う。

物語は30歳になるユリアのプライベートを描いたもので、彼女の恋人アクセルとの関係、その後に出会うアイヴィンとの恋愛が綴られる。

筋書き自体は特段珍しい話というわけではないが、その中身はご都合主義の予定調和のラブストーリーとは一線を隠したものだ。

綺麗事じゃないから身に迫る。

全てを他人事として片付けることはできないほど、心に直接響いてくる。

物語の枠組みの中に決してユリアは埋没しない。

むしろそこにあるのは、彼女が自由に振る舞うから物語が後から付いてくるといったようなリアリティだ。

この映画を観た人から「わたしはユリアだ」とか「こんな子と付き合ってた」とか、そんな感想も漏れ聞こえてきそうだ。

それほどに、彼女の存在は観る者の心をヒリヒリとさせるだろう。

個人的に観たかったラブストーリーとはこんな映画だ。

いや、恋愛の枠組みだけでこの映画を捉えるのは小さすぎるかもしれない。

人生の苦味と哀しさを噛み締めながらそれでも全てを肯定して前に進むもうと思える、そんな祝祭のような傑作だ。

 

© 2021 OSLO PICTURES – MK PRODUCTIONS – FILM I VÄST –  SNOWGLOBE –  B-Reel – ARTE FRANCE CINEMA