【レビュー】圧倒的多数のタリバン兵に囲まれた前哨基地で生き残れるのかー『アウトポスト』




アウトポスト(óutpòst)《軍事》前哨基地[部隊]

戦争における前哨基地とは防衛・補給等の等の目的のために最小限度の規模で設置される前線の基地を意味する。

この映画は、ある1つの前哨基地が絶体絶命の状況に陥った実話を描いたものだ。

その基地とはアフガニスタン北東部に米軍が設営したキーティング前哨基地。

四方が完全に山に囲まれた戦略的にも不利な地形に位置する。

2009年にこの基地をめぐって米軍とタリバンとの間で壮絶な戦闘が展開された。

『カムデシュの戦い』と呼ばれるこの戦闘は米軍史上最大の悪夢として語り継がれるほどに衝撃的なものだった。

基地に到着後一見してすぐに自分が危険すぎる前哨基地に派遣されたことを悟る米軍兵士たち。

周囲の山からはタリバン兵が容赦なく銃撃してくる日常。

それでも仲間内では陽気に前向きに任務をこなしていたが、ある日大量のタリバン兵が基地を急襲して事態は一変する。

士気の低い味方のアフガニスタン兵含めても基地を守るべく応戦する米軍サイドはわずか50人。

これに対して山からじわじわと降りて基地を襲うタリバン兵は300人。

この圧倒的な数的不利に加え、明らかな地形上の不利、前哨基地自体に内在する防御上の欠点、あらゆる不利な要素が主人公たち兵士を苦しめ、次々とその命を奪っていく。

蜂の巣状態に撃ち込まれる過酷な状況から兵士たちは必死に生き残るための活路を模索する。

その精神力、行動力。

あまりの緊迫感とリアルな描写に、映画の観客も確実にこの前哨基地に一緒に閉じ込められるだろう。

自分だったらあの建物の扉を出てあの場所まで覚悟を決めてダッシュできるだろうか。

自分だったら撃たれた仲間をあんな風に引きずって移動させられるだろうか。

自分だったら…

数秒の躊躇すら命取りになり、その何もしない数秒が事態を改善させてくれるわけでもない。

次から次へと絶えず決断と行動を強いられ、それに終わりが見えない。

この戦争映画は、前半のテンポを後半でガラッと変えてそんな極限状況を克明すぎるほどに描いている。

それはまさに近年の戦争映画でも稀なレベルの凄まじい臨場感に溢れた戦闘の追体験だ。

閉ざされた映画館の大スクリーン、大音量でこそ是非この前哨基地を「体験」してほしい。

 

『アウトポスト』 あらすじ

アフガニスタン北東部に位置するキーティング前哨基地。米軍の補給経路を維持するための重要拠点とされていたが、派遣されてきたロメシャ2等軍曹ら兵士たちは、その地をひと目見て驚愕する。そこには基地として致命的な欠陥が存在していたのだ。四方を険しい山に囲まれた谷底に位置しており、敵に包囲されれば格好の的となる。つまり、防御面からすると極端に脆弱なのだ。いつタリバン兵の銃弾が打ち込まれてもおかしくはない。案の定、日々襲い来る攻撃の中、誰かが命を落としてゆく。「もし圧倒的多数の敵に囲まれたら・・・」彼らの日常は文字通り死と隣り合わせだった。そしてその日、ついに恐れていたタリバン兵の総攻撃が開始された。それは後に「カムディシュの戦い」と呼ばれる、アフガニスタン紛争で最も過酷な激戦の幕開けだった。

監督:ロッド・ルー
脚本:エリック・ジョンソン、ポール・タマシー
■撮影:ロレンツォ・セナトーレ
■出演:スコット・イーストウッド ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ オーランド・ブルーム 他

©OUTPOST PRODUCTIONS, INC 2020

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毘沙門天 華男
映画、旅、ボクシング、読書、絵を描くこと、サウナ、酒が趣味の福岡出身の多動性中年。このプロフィールを書いてる途中もドラクエウォークをしています。