【インタビュー】兒玉遥「辛い状況になった時、助けてと声をあげることが大切」 主演作『空のない世界から』が投げるメッセージを語る




HKT48を卒業して本格的に女優として活躍中の兒玉遥の主演映画、『空のない世界から』が公開となった。本作はシングルマザーとして懸命に生きながら<無戸籍>である子どもに負い目を抱え葛藤する母親の物語で、兒玉は主人公の藤井麻衣香を体当たりで演じている。「シングルマザー」と「無戸籍者」に焦点を当てた本作について兒玉に話を聞いた。

――まず「シングルマザー」という点で難しかったのではないですか?

そうですね。なので経験したことがないところを自分の想像力や自分のイメージだけで雰囲気を出さないといけなかったので、そこでしっかり母親に見えるのかが難しいところではありましたね。

なんとなくイメージはできますし、いろいろなお母さん像を観たことがあるけれど、実際に自分がひとりの女性とは違う母親というステージに行くということは、内面的な部分もあり、そこが一番自分の中では不安ポイントではありました。

――実際に撮影の段階では、いかがでしたか?

それが撮影本番では自信を持ってカメラの前に立てていて、それは監督の小澤和義さんが、すごく気にかけてくださったからなんです。たくさんディスカッションをして本番に向けてイメージの擦り合わせをしていけたので、本当にありがたかったなと思いました。

――麻衣香と重なる部分や共感する部分はありましたか?

まわりから言われるまでずっとひとりで頑張ってしまうところ、ですかね。わたしもなかなか助けを求められないんです。ひとりでやりたい気持ちが強いところは、ちょっとわかるなと思うところはありました。

――これまでのご自身の経験とリンクしたわけですね。

はい。そういう部分もありました。今はそこまでストイックに追いつめることは、特に最近はしなくなりました。今ではすぐに「助けて!」と言えると思いますし、できないことはとにかくできる人に頼って生きるほうがよいと思うんです。そう思えるようになったけれど、若かった時はそうは思えない自分もいたなあと、思い出しながらやっていました。

――改めて麻衣香を通じて、受け取ったものはありましたか?

彼女は後ろめたさと言うか、無戸籍の子どもがいることに負い目を感じている部分があると思うんですよ。そういった立場で生きている人。これ以上誰かに迷惑をかけられない、どうしてもふたりだけの世界に引き込まれがち、そうならざるを得ない部分があるのですが、その気持ちがわかるんですよね。でも辛い状況になった時、「助けて!」と声をあげることは大切なんです。人って意外にみんな優しいものですよね。しっかり声をあげていくことが大切で、助けを求めれば手を貸してくれる人もいるし、知識がある人に話せば違った世界が見えることもあるんです。勇気を出して一歩踏み出せば、自分の世界の可能性が広がるということを伝えられる作品になっていると思います。

――この作品・プロジェクトに出会った意味は大きそうですね。

わたしは結婚願望がまったくなく、子どももほしいと思ったことがなかったんです。まだまだ自分のことで精一杯で、ひとりの女性としての人生を楽しみたい、謳歌したいという考えが強かったのですが、この作品を通して子どもの存在って尊い、素晴らしいものだなと気付けたんです。自分以外に大切なものができるわけじゃないですか。そうすると、生きる原動力にもなるなと思いました。母親役を演じたことで、親への感謝の気持ちもより深まりましたし、そう思うと子どもっていいものだなって思って、結婚観や出産に対する考え方が変わりました。

――大変な価値観の変化ですよね。

いいものだなって(笑)。1回は経験をしておいたほうがいいなという考えに変わりました。なので、その世界を知れてよかったなと思いました。子どもは自分の分身みたいなもので、出産は女性にしか経験できないもので、きっと自分が想像する以上に幸せだろうなという気がしています。

――最後になりますが、映画を待っている方に一言お願いいたします。

今回初めてシングルマザー役に挑みました。母親としてひとりの女性が強くなっていく姿を観ながら、この作品を通じて少しでもみなさんに何かが届けられたらいいなと思っています。

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