【レビュー】情け容赦のない人でなし映画が戻ってきた―『セルビアン・フィルム』




2010年に制作されると50カ国近い国で上映禁止になったスリラーの超問題作が日本の映画館に10年ぶりに戻ってきた。

10年前の公開時にも大いに物議を醸したが、今回は4Kデジタルリマスター&無修正版とさらにパワーアップしている。

とにかくヒドい。。。

エログロで目を見開いて興奮するというものではなく、無言で目を覆いたくなるようなシーンも少なくない。

何をどうレビューすればいいのか、正直悩む部分も大きい。笑。

本気でたくさんの人に観てほしいか?と聞かれると、人を選ぶとしか答えられないし、この映画が好きなわけでも、好きだと思われたいわけでもない。(何の弁明だ!?)

とにかく過激だ。

これが初監督作だった監督は、検閲的なモノへのアンチテーゼを意図していたのだから、その過激さは言わば確信犯的なモノだ。

タイトルにあるとおり舞台はセルビア。

タランティーノ制作総指揮作の『ホステル』(スロバキアが舞台)もそうだが、そこまで国が裕福ではない中欧の国が舞台のエロ系ホラーやスリラーは妙にリアリティを感じる。

ただ本作の主人公は旅行客などではなく、元ポルノ男優のミロシュ。

今は昔ほど活躍はしていないが、愛する妻と息子と幸せに暮らしている。

しかしそんな彼は高額のギャラに惹かれて怪しすぎるポルノ映画への出演を引き受けてしまう。

そしてこの映画の撮影こそ彼にとって地獄のような体験の始まりだった。

先日公開された台湾ホラー『哭悲 THE SADNESS』性とホラーをミックスしつつ倫理観へ挑戦するかのようにエグいシーンが続くが、ある1つのシーンは本作のあるシーンが影響を与えたんじゃないか、と思えたところがあった。

ただ落ち込んでしまうほど暴走の一途を辿るのは明らかに本作の方だ。

特に子供を持つ身として、ため息混じりに観るのをやめたくなるようなシーンがいくつかある。

劇中で主人公も同じように落ち込んでいることだけが不孝中の幸いだった。

監督は、映画やアートに規制をかける一方で、現在もニュースがロシアとウクライナの戦争の殺戮や暴力を見せていることに疑問を感じ、規制を作る方がおかしいのでは?と感じているらしい。

少なくとも、映像に関する規制の是非やあらゆる表現媒体の間の規制のバランスなどに一石を投じるだけのインパクトが本作にあることだけは確かだ。

自分は規制について議論する前にぐったりしてしまったけど…

さぁ、みんなもぐったりしに映画館へ行こう!(投げやりではありません)

 

©2010 CONTRAFILM

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毘沙門天 華男
映画、旅、ボクシング、読書、絵を描くこと、サウナ、酒が趣味の福岡出身の多動性中年。このプロフィールを書いてる途中もドラクエウォークをしています。