あのヤクザ漫画の名作を令和のスクリーンで実写化した『静かなるドン』(後編)が現在公開中だ。カタギのサラリーマンの近藤静也(伊藤)が暴力団の総長にならざるを得なくなり、ヤクザ抗争のない平和な世の中を実現するため、<二足のわらじ>で悪戦苦闘する物語。主演の伊藤健太郎、猪首硬四郎役で総合プロデュースも務めた本宮泰風にインタビューした。
―有名なシリーズですが、オファーがあった時はいかがでしたか?
伊藤:「静かなるドン」というタイトルは知っていたので、昔から愛されている作品を自分がやれることはうれしかったです。これまでヤンキーものに出たことはあったのですが(笑)、任侠ものでヤクザを演じたことはなかったので、初めてのワクワク感、そしてドキドキ感はありました。
本宮:香川さん、中山さんと、いろいろな方々が演じられましたが、彼のこの若さで、こういうタイプの俳優の『静かなるドン』を観てみたいと思いました。あとは総合プロデュースとして昭和の物語を令和版に書き換えたので、どんな『静かなるドン』になるかなと期待しながら撮影に入りました。伊藤健太郎がやることで、間違いなく新しいものになるだろうと。
―主人公の近藤静也は、昼はサラリーマンで夜はヤクザなので、その演じ分けはいかがでしたか?
伊藤:そうですね。混乱しそうになる瞬間はありました(笑)。ヤクザの静也の時とそうじゃない昼間の静也のシーンでは、まるで別の作品の撮影をしているような感覚もあって。やりすぎたら監督が微調整してくださったりして助けてもらいました。
撮影のスタイルは、わりと前半のほうでアクションなどヤクザの静也を撮らていただいて、真ん中くらいからオフィスで働いているシーンを撮っていましたが、後半、秋野さん(筧美和子)が現れることで、昼の静也から夜の静也に一瞬で変わるシーンがあり、そこは大変でした。昼夜のシフトチェンジが難しくてパニックになりかけもしましたが、基本的には演じ分けを含め楽しくやらせていただきました。
本宮:主人公の急な変化が『静かなるドン』の売りでもあるんですよね。昔は大きいサングラス一個で変わるという、ある種のコメディ要素も人気でしたが、今回、伊藤健太郎は上手くお芝居で魅せてくれました。
―そして今回、お互いに共演された感想はいかがでしたか?
本宮:真面目でびっくりしました。自分がその歳だった頃のことを考えると恐ろしいほどで、どう懺悔すればよいのかと(笑)。現場はかなりタイトで遅くまでかかることもありましたし、彼は出ずっぱりだったので、寝る時間もなかったと思うんです。おそらくその日が終わった後に勉強もしていたと思います。僕はそういうことをしてこなかったので、夜まで働かせるほうが悪いだろうと(笑)。その姿勢には感心しました。
伊藤:本宮さんは今回、総合プロデュースだけじゃなく役者としてもお芝居をされてましたが、僕はそこまでは出来ないと思いました。お芝居じゃない部分も見えている方ですし、いろいろと教えてくださるし、とても勉強になりました。僕自身もそういう立場での作品作りをやってみたいなと思いました。
―今回“静かなるドン”を演じることで、伝えたいことはありましたか?
伊藤:僕は静也が根底に持っている想い、ですかね。ヤクザというものを失くすのではなく、この世の中に合った組織に変えていくという想いでいろいろと動いていくのですが、その感覚を持っている静也が、男の生き様としてかっこいい部分なのかなとは思いました。
本宮:この主人公は「とりあえず」では動かないんですよね。ちゃんと気持ちの整理を付けている。小さいころから悪ガキで少年院入って出て、流れでヤクザをやっているというわけではないので、ちゃんとポリシーを持って社会人をやっていて、自分に正直でもあるんです。人って、頑張っている人を見れば頑張れるものですよね。ですので、この主人公の生き様を映画館で観ていただいて、そういう気持ちになってほしいです。
『静かなるドン』後編 公開中
(C) 2023「静かなるドン」製作委員会
配給:ティ・ジョイ
公式サイト:reiwaoutlaw.com
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