『ゴジラ-1.0』の東宝が新たに手掛ける才能支援プロジェクト「GEMSTONE Creative Label」。そのレーベル初の劇場公開作品として4人の新進気鋭監督たちによる短編オムニバス映画『GEMNIBUS vol.1』が、6月28日(金)より2週間限定公開となる。『ゴジラVSメガロ』で監督・脚本・VFXを務めた上西琢也氏に話を聞いた。
―今回の短編オムニバス映画『GEMNIBUS vol.1』は、フォーマット、メディア、そして実績の有無を問わず、クリエイターが自由に才能を発揮できる場を提供するという目的のプロジェクトですが、この取り組みそのものについてどう受け止めていますか。
こうして発表の場を設けていただけることは、とてもありがたいことだと思っています。今の時代だと作った動画なりをネットに上げるという方法もあるかと思いますが、映画館にかけるとなるとかなり選択肢が絞られてしまいますよね。そこを踏まえると本当に素晴らしいと思います。
―本作も元々は全世界1,070万回再生を超える『ゴジラVSガイガンレクス』待望の続編として昨年YouTubeで公開され、470万回再生を超えるなど話題になりましたが、今回は映画館用に作り直した〈シネマティック・バージョン〉で上映するそうですね。
まず映像全体の明るさを劇場用に向けて全部調整し直しました。というのもスマホやタブレットで映画を観る時って、だいたいが明るい環境なんですよね。そういう状況で観る時の状態と、映画館のように真っ暗な状態で大きな画面で観る状態は違うので、それをまず調整しました。
あとは映画館という限定的な環境で観る作品になるので、それに向けてスピーカーを分けて音の調整をしたり、スタッフロールも今回は最後にまとめています。YouTube版のスタッフロールが開けた後のゴジラが目を開ける演出が変更になるので、その間を補完する新規カットを入れたりしています。
―シーンそのものも増えているわけですね。
そうですね。バトルシーンも手直ししています。地面から見上げるカットでは、手前に電線や背の低い建物を追加したりしています。アクションシーンでは火花が散ったり、細かいところで言うとメガロが最後に手をドリルにするところでは内部が光っているところを追加したり、ちょっとずつ変化している感じですね。比べると違いが分かると思います。
―世界的な人気を誇るゴジラを扱う上で、大切にしていることは何でしょうか。
僕も小さい頃にゴジラを観て育ったので、その時に受けた衝撃を表現出来たらいいなという感じですかね。今回“新しい技”を出していますが(笑)、「これ全然ゴジラじゃなくていいよね」ということはやらないようにしています。
ゴジラはただの大きな動物のキャラクターではなくて、モンスターでもない、怪獣なんですよね。被害者であり、加害者でもあるという立ち位置で、絶対的な悪者でもなければ、正義の味方でもない。言うなれば、純粋に強い存在なんです。でも、それだけでもない悲しい深みもある。そういうことを大切にしています。
―『ゴジラ-1.0』の制作にも参加されていますが、山崎貴監督と本作について話をする機会はありましたか。
自分が作っている最中は、ほぼ交流はなかったですね。ただ、これを作る前に山崎さんと話す機会はありまして、その時たぶん山崎さんも『ゴジラ-1.0』の脚本を書いているくらいのタイミングでした。そこで戦後直後くらいの時代設定の映画をよく観ているという話をされていました。リサーチをよくされていて、下準備に膨大な時間と労力をかけている姿を見て、自分もそういう姿勢を真似していこうと。なので、50年前の『ゴジラ対メガロ』は、もう何回も観ましたね(笑)。
―改めて発見はありましたか。
あの当時の『ゴジラ対メガロ』は予算がなかったみたいで、前作の『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』のフィルムなど、フィルムの使い回しがたくさんあり、『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』に森に逃げるシーンがあるのですが、そのシーンを丸々使っていたり。全部に均等にお金をかけるよりは、ここぞというシーンに集中しているんですね。メガロがダムを破壊するシーンがあるのですが、あれはちゃんと作っている。リソースが少ないなか頑張って作っているので、その姿勢を見習っていこうと思いました。
―最後になりますが、映画を待っている方たちへメッセージをお願いします。
ゴジラは迫力ある大きなスクリーンで観ていただきたいです。ぜひ映画館で観ましょう!
(C) 2024 TOHO CO., LTD.
東宝と才能の出会い — 4人の監督による4つの映画
6月28日(金) – 7月11日(木)
TOHOシネマズ 日比谷・TOHOシネマズ 梅田にて2週間限定ロードショ