100年生活者研究所が意識調査 幸せそうな高齢者の姿を広めることが、100年人生を肯定的に捉える鍵!




「敬老の日」と「老人の日」。これを同じものだと思っている人が多いかもしれないが、実は違う。9月第3月曜日の「敬老の日」は〈老人を敬愛し長寿を祝う日〉で国民の祝日であるのに対し、9月15日の「老人の日」は〈老人福祉などの啓発を呼びかける日〉で、老人福祉法によって定められた記念日なのだ。そんな「老人の日」に合わせ、株式会社Hakuhodo DY Matrixのシンクタンク「100年生活者研究所」は米国・中国・フィンランド・タイの4か国の生活者を対象に、「100歳まで生きたい」気持ちが国によって異なるのかを調査。さらにその結果を同研究所が設立時に行った国内調査結果と比較した。

本調査結果について、100年生活者研究所研究員 田中 卓氏は次のようにコメント。

「本調査により、日本は他国と比べて“100歳まで生きたい”という気持ちや幸福度が低いことがわかりました。また、各国共通で幸福度が高い人ほど、100年人生に対しても前向きである結果が示され、両者には相関関係があると言えそうです。なぜ日本は他国と比べて低い結果となったのでしょうか。ここでは他の調査結果を交えながら仮説を提示し、それを踏まえて“日本人が長生きを前向きに捉えるために何を取り組めば良いのか”についてお伝えします。」


<100年生活者研究所研究員 田中 卓氏>

100年生活者研究所では国内の会員を対象に毎週アンケートを実施しているが、そこで「100歳まで生きることは不安が増えることですか、チャンスが増えることですか」と質問したところ、「不安が増える」と回答したのが71.8%に上り、多くの人が「長生きはリスク」と捉えていることが分かった。

高齢者が多く、年金2千万円問題や老々介護といった「長生きに伴う問題」についての情報が広く流通している日本。そのため他国と比べて「長生きの負の側面」が浮き彫りとなり、100歳まで生きたいと思う人が少なくなるという結果につながっているのかもしれない。

一般的に日本人は集団主義の傾向が強く、社会や他者との関係性を重視する気質があると言われている。そのため、会員アンケートでは9割弱の人が「100年人生で、みんなに迷惑をかけたくないという気持ちを感じる」と回答したようだ。「100歳まで生きたいとは思わない」人が多いことの背景に、「長生きして迷惑をかけたくない」という日本人の意識があるのかもしれない。

一方で、集団主義的傾向の裏返しなのか、8割強の人が「みんなの役に立ちたいという気持ちを感じる」と回答。もし高齢者の世話を「人と社会に役立つこと」として当たり前に認識できる社会になれば、「長生きは迷惑」と感じることなく「100歳まで生きたい」と考える人が増えるのかもしれない。

「100歳まで生きたい」と感じている日本人が少ない理由をここまで分析したが、ではどうすれば現状を打開できるのだろうか。

そのヒントが、次のデータにありそうだ。これは「100歳の人は幸せそうに見える」と回答した人と「100歳の人は大変そうに見える」と回答した人のそれぞれに「100歳まで生きたいか」を質問したもの。

「とてもそう思う」もしくは「そう思う」と答えたのは「100歳の人は幸せそうに見える」人が67.8%だったのに対し、「大変そうに見える」人では25.5%となり、40ポイント以上の差があった。

この結果から、「100歳の人が幸せそうに見える」人ほど「100歳まで生きたい」気持ちが強くなると傾向にあることがわかった。つまり「幸せな100歳」「幸せな長生き」を体現している人にスポットライトを当てることで、100年人生を前向きに捉える人を増やしていくことができるのではないだろうか。

<5か国比較調査結果詳細>

Q1. 人生100年時代において、あなたは100歳まで生きたいと思いますか?
→「100歳まで生きたい」と感じている人の割合は日本が最も低い

「とてもそう思う」もしくは「そう思う」と答えた割合は、日本が26.6%で対象5か国の中で最も低く、2番目に低いタイ(53.2%)と比較しても半数以下だった。最も高かったのは中国の69.6%で、次いでアメリカ(62.3%)、フィンランド(54.5%)と続いた。

Q2. あなたは全体として、どの程度幸せですか。「とても不幸せ」を0点、「とても幸せ」を10点とすると、何点くらいになると思いますか?
→①日本の幸福度は対象5か国で最も低い5.8点

日本の平均点は5.8点で、対象5か国の中で最も低い結果となった。最も高かったのは中国の8.4点で、タイ(7.3点)、アメリカとフィンランド(どちらも6.9点)と続いた。

→②対象5か国全てで、幸福度スコアが高い人ほど「100歳まで生きたい」という気持ちが高かった

幸福度スコアを「高幸福度(8~10点)」「中幸福度(6~7点)」「低幸福度(0~5点)」で分け、それぞれで「100歳まで生きたい」人の割合を見たところ、幸福度が高い順に「とてもそう思う」「そう思う」の割合が多くなり、日本では高幸福度(35.5%)が低幸福度(21.1%)と比べて約1.7倍高くなった。また他の対象国も同様の傾向が見られ、幸福度と100年人生意向が関係していることが示唆された。

調査概要
<日本・海外共通>
■調査目的/日本と海外の100年生活の実態を把握する
■調査手法/インターネットモニター調査

<海外調査概要>
■対象地域/アメリカ・フィンランド・中国・タイ
■調査期間/2023年3月
■調査対象者/20~70代の男女 各国600名(計2400名)

<日本調査概要>
■対象地域/日本 全国
■調査期間/2022年10月
■調査対象者/20~70代の男女2400名

<LINE会員調査>
■調査目的/人生100年時代に対する認識と態度を把握する
■調査手法/LINEによるアンケート調査
■調査地域/日本 全国
■調査日時/2022年3月
■調査対象者/100年生活者研究所 LINE会員(20~80代男女)1604名

周りの人に支えられながらも、長生きのリスクをしなやかに乗り越えた100歳の人の姿が社会で見えるようにすれば、結果として「100歳まで生きたい」という希望を社会に生み出していくことができるはず。そしてそれができれば、超高齢化社会の日本において長生きは迷惑ではなく、むしろ「社会の役に立つこと」になっていくことだろう。