【インタビュー】上坂すみれ、「みなさんが抱えているものを背負って劇場を後にすると思います」 映画『どこよりも遠い場所にいる君へ』公開中




阿部暁子による人気青春小説を原作とした、映画『どこよりも遠い場所にいる君へ』が現在大ヒット公開中だ。本作に主人公・和希(石橋陽彩)のクラスの学級委員長で、穏やかな笑顔で揉め事を収めるしっかり者の少女・三島たまき役を、声優の上坂すみれが演じている。内面には繊細な機微も抱えるたまき役について本人に話を聞いた。

――本作へ出演が決まった時はいかがでしたか。

オーディションの段階でたまきには感情移入していたので、決まった時は本当にうれしかったです。出番が限られていましたが、その中でも印象的な役割を担っているキャラクターだなと改めて思いました。

――原作や脚本など作品世界についてはどのような印象でしたか。

わたしは青春SFみたいな作品を読まないタイプなのですが、島の物語が好きなので、その視点で楽しみました。閉鎖的な空間だけれども自然が美しくて、島で起きたことはすべて筒抜けで息苦しさもあるような、緩やかな地獄みたいなものが島モノにはあるので、そういう魅力を感じました。

――三島たまきは、物語が後半に行くにつれて大きく変化していくキャラクターでもありますが、どのように受け止めて演じましたか。

一見、とても理想的なクラスのヒロインで真ん中に立っているように外からは見えるけれども、彼女自身の中では毎日全てが虚構で本当は暗く、誰にも見せられない孤独を感じているのかなと。そこが魅力的でした。

わたしは二面性があるキャラクターがもともと好きですし、わたしも物語の主人公のように真っ直ぐにモノを言えるようなタイプではないので、共感するという意味でも惹かれたのではないかと思います。

――今日お話を聞いてからたまき像を振り返ると、たとえば上坂さんの愛情で彼女を包みこむというか、優しい演じ方に感じるのですが、そのあたり何か意識されていたのでしょうか。

そうですね。たとえば嵐のシーンなどでは恐ろしく見えてほしいのですが、とはいってもたまきは普通の学生で、すごい能力があるわけでもないんですよね。ただ同類の子を見つけられたということで、主人公の和希も自分と同じように暗いままでいてほしいと。そこだけ見れば、普通といえば普通の子なんです。

もし彼女も東京で生まれていれば、そこには似たような境遇の子もいて、早めに出会えて、あのような大事件を起こすこともなかったと思うんです。そういう彼女の環境の不運さを思った時に、基本的に演じるわたしが「わかるよ」と。

ただ、あの事件の後には救いもありましたし、彼女はあのような青春を過ごしたけれども、いつか大人になるタイミングで都会に出てみたら、「いろいろな物事を見て行けるといいね」という眼差しではいましたね。

――今回の『どこよりも遠い場所にいる君へ』、未見の方にはどう勧めますか。

もちろん青春SFがお好きな方には無条件でお勧めですし、意外とわたしみたいな、そこをストレートに観て来なかった層にもお勧めしたいです。

離島特有の閉塞感を感じている人にとっては、この“どこきみ”の島の世界観って、自分がそこにいたらどのキャラクターのように振舞うだろうか、たぶん自分に似たキャラクターがひとりは見つかると思うんです。あの学校の生徒だとしたら、自分はどういるのだろうという、七緒(永瀬アンナ)がクラスにやって来たら、どんな感じなんだろうというような。

キラキラした青春モノから離れている人にこそお勧めしたいというか、鑑賞後は第一印象と違うと思うんです。みんなが抱えているものを背負って劇場を後にすると思うので、大人と学生でもだいぶ感想も違うと思いますし、みなさんどういう感想を抱くのか、期待して観てほしいと思います。

©阿部暁子/集英社・『どこよりも遠い場所にいる君へ』製作委員会