【インタビュー】麻生久美子「わたしは母を想いました。今まで生きて来たなかの物事と重ね合わせることができる映画です」 映画『高野豆腐店の春』公開




尾道を舞台に愚直で職人気質の父・高野辰雄(藤竜也)と、明るく気立てのいい娘・春(麻生久美子)の人生を描く父と娘の物語、映画『高野豆腐店の春』が全国公開となる。春役の麻生に本作の魅力を聞いた。

―完成した映画をご覧になっていかがでしたか?

台本の段階でとても温かくいいお話だなと思っていたのですが、完成した作品は、素晴らしいキャストのみなさんがお芝居をすることで、よりよくなるのだなと感じました。面白い箇所もみなさんのお芝居でより面白くなっていましたし、尾道が舞台ということもあると思うのですが、親子の関係性は思っていた以上にグッと来て、ふたりの関係性がよく見えました。藤さんのお芝居も台本での想像以上に膨らんでいたと思いました。

―<“大豆”と“水”と“にがり”だけでコツコツ作られる豆腐のように、淡々とした日々の生活にこそ人々のしあわせがある>と、人生を豆腐に例えている点も面白いと思いました。

この作品はいろいろな人が誰かのことを想っている映画で、わたしはこの映画を観た時に、自分の母親のことを想いました。誰しもが今まで生きて来たなかの、そういうことと重ね合わせることができる映画です。とてもシンプルなストーリーではあると思うので、より響くのかなとも思いました。それに、豆腐がとても美味しそうですよね。豆乳も本当に美味しかったです。わたしのお豆腐観も変わったのでいい出会いでした(笑)。

―春という女性は、どのように受け止めて演じたのでしょうか?

わたしが脚本で受け取った印象と、三原光尋監督からはとにかく明るくてみんなから好かれる人というキーワードをいただきました。藤さんが演じているお父ちゃんがとても魅力的だったので、そういう一面もあるのか、なるほどと、そういうことも引き継げたらいいなあとか、撮影しながら似たような空気を出せないかなとも想いました。お父さんが頑固なので、娘も頑固でいいだろうとか、そういうところは意識したところですね。

―麻生さんは映画の出演経験が抱負ですが、『高野豆腐店の春』の撮影を通して改めて思うことはありましたか?

改めて映画はいいなと思いました。最近はドラマなどが多く、撮影のスピードがまったく違うんです。それこそお豆腐ではないけれど、じっくり丁寧に作る感じや、映画の現場に流れている空気みたいなものは、やっぱりわたしには心地いいものだなということを再認識しました。映画をたくさんやらせていただいていたので、やっぱりわたし、映画が好きなんだと改めて思いました。

―デビューから約20年、今現在の仕事に対するモチベ-ションは何でしょうか?

難しいです。わたし自身も自問自答中です(笑)。本当にやりたい仕事なのか、わりと考えることはあります。でも、お仕事するのは好きなのですが、子どもが小さい時は今しかないので、今は子育てを頑張ったほうがいいのではないかと思うこともあります。もちろん仕事にも真剣に向き合っていますが、どれくらい働くべきかなど、今仕事に対して色々と考えてしまうのは、子育てと並行してやっているからなのかとか、いろいろ考えます。

―最後になりますが、映画『高野豆腐店の春』、どういう人に観てほしいですか?

今回初めて思ったことなのですが、わたしやわたしより上の世代の方たちに観てほしいと思いました。もちろん家族でお子さんと一緒に観てもよいと思っていますが、親がいる方、春くらいの娘、息子がいる方たちのほうがより響く内容だろうなと思ったんです。あと藤さん演じるお父ちゃんみたいに生きて行けたら、楽しそうだなって思いました。同じ町に同世代の元気な仲間がいるっていいですよね(笑)。

 

ヘアメイク:ナライユミ
スタイリスト:井阪恵(dynamic)
ドレス ¥59,400 (ルーム エイト ブラック/オットデザイン)
他アクセ、靴 (スタイリスト私物)

問い合わせ先
オットデザイン/ルーム エイト ブラック
03-6824-4059

撮影:桃

『高野豆腐店の春』
監督・脚本:三原光尋
出演:藤竜也 麻生久美子 ほか
配給:東京テアトル
8月18日(金)より、シネ・リーブル池袋、新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー
(C) 2023「高野豆腐店の春」製作委員会