市制130年を迎える“水と緑と詩のまち”群馬県前橋市の街中を舞台に「本でみんなが元気になる」をテーマとした本のフェスティバル、「前橋BOOK FES 2022」がこの秋開催されるが、その発表会が都内で行なわれ、エグゼクティブ・プロデューサーの糸井重里、サポーターのみうらじゅん、つじあやのが出席。本にまつわるクロストークを繰り広げた。
「前橋BOOK FES 2022」は、人にとってとても特別なもので大事にしているはずなのに、一方で知の在庫として家に留まったまま時間が過ぎていくという矛盾に満ちた存在である本が、命を吹き返してまた喜ばれるようになる場を作りたいという糸井氏の思いからスタートする。
アイデアは20年前に思いついたという糸井氏は、「家の中にあるものの本を持って集まるだけで、本の話ができるし、読み始めることもできる。本で徹夜したり、朗読会もできる。これは楽しいだろうなと思いましたが、なかなか場所を見つけるのは大変でした。受け入れる側にも覚悟がいるし、コストもかかる。何度も思ったが、実現しなかった」と説明。
そこでエグゼクティブ・ディレクター田中仁氏の誘いで前橋の街が候補になったそう。「有名な映画のロケ地としてだいぶ使われていて、そのアーケイドに本を並べたら市ができるのではないか」と東京から100キロ圏内の前橋に期待を膨らましたという糸井氏。「家賃だけ払って読まない本と、一方で物見遊山で来た人が本に興味を持ってくれる。これはどこかフェスに似ているなあと思いました(笑)」と経緯を語る。出展者が自分のおすすめの本を持ち寄り、参加者と交流しながら本をトレードする「本のトレード」エリアを中心に、地元商店街の店舗も参加しながら、本を通じて人と人、人と街の新しい出会いと交わりをも楽しめる場を目指す。
後半のトークセッションでは糸井がファシリテーターとなり、みうらとつじの3人でトークが進行。著書の数を聞かれたみうらは、「僕は読者家ではなかったのですが、買うのが好きで基本、読んではいない。本棚に差し込むまでが好きだったので」と本に対する独自の距離感を明かしつつ、「デビューは漫画だったんですけど、僕はこう見えて文章とか書いたりするんですよ。自分でも把握していないのですが、170冊ぐらい出している。こんなに出しているのに本屋にあまり置かれてない怪奇現象ですよね(笑)」と自虐ネタを交えて実績を披露した。
しかも「デビュー作のあとがきを糸井さんが書いているんですよ」と言い、「糸井さんは3冊くらいあとがきを書いてくれたのですが、本編より面白いんですよ(笑)。今から40年くらい前の本なのにいまだにグッとくる。なので糸井さんが書いてくれたように、僕も前橋ブックフェスのあとがきのような存在になれればと」と締めていた。
自身にとって大事な本について聞かれたつじは、「年代によって変わると思うのですが、高校生の頃に心のことで悩み、仏教の本に出会いました。その時の本を売らずにとってあり、その本を見るとその時の自分を切ないくらいに思い出します」とエピソードを明かした。
「前橋BOOK FES 2022」の開催は、2022年10月29日(土)30日(日)。「ふたりは来てくれるかな?」との糸井の誘いに、「もちろん本もそうですが、わたしは一応シンガーソングライターなので歌はどうですかね?(笑)」とつじが提案すると、みうらも「僕もシンガーソングライターですからね。ご当地ソングも出していますので」と話を合わせ、笑いを誘っていた。なお、同イベントには、実行委員長の山本 龍 前橋市長も参加。糸井氏、田中氏とともに質疑応答に応じていた。(本の出展方法や具体的なプログラムなどは公式の発表を参照のこと)