【インタビュー】花江夏樹、「少しでも子どもに何か残せるもの、伝えられるものはないだろうかと考えます」




あの明石家さんまが、西加奈子の同名小説に惚れ込み、企画・プロデュースした劇場アニメ映画、『漁港の肉子ちゃん』が公開になった。漁港の船で生活するちょっと訳あり母娘・肉子ちゃんとキクコの愉快な暮らしぶりを活き活きと鮮やかに、自然の残るノスタルジックな漁港の景色や、季節の移り変わりを美しく描き出した感動のハートフル・コメディーだ。その公開を前に二宮役を演じた人気声優の花江夏樹にインタビュー。話を聞いた。

 

―主人公の肉子ちゃんのキャラクターが強烈でしたが、改めてどこに魅力を感じましたか?

肉子ちゃんはパワフルで存在感があって、本当にこういう人が存在するのかと思うくらいのキャラクターだと思いました。それが映像になってどれくらいインパクトが出るのかすごく楽しみでしたが、それを超えてくるくらいの画力と演じる大竹しのぶさんのお芝居が、すごくいいですよね!

―そもそも名前も強烈でしたよね。

そうですよね。肉子ちゃんという名前は、なかなか女性につけないですよね(笑)。でもそれを感じさせないくらいの明るさが、彼女にはあるんです。すごく悲壮な目にも遭い、泣かされたりもしているけれど、人としての大切なものを持ち、信じてずっと進んでいる。その明るいところがいいなあと思いますし、僕自身、日常生活でも大事にしていきたいなと思いました。

―演じられた二宮についてですが、共感するところはありましたか?

一人の世界に入っているところですね。彼はミニチュアを作っていますが、僕も何かに没頭できる、集中できることが小さい頃にありました。一人っ子でひとり遊びが得意だったので、同じことしたなあと思いました(笑)。あと彼は髪の毛で目が隠れるくらいに前髪を伸ばしているのですが、たぶん人と接することが得意ではないんですよね。僕も小さい頃は人見知りの部分があったので、そういうところは共感しますね。

―本作には家族、生きることなど、いろいろなテーマがあるなか、ご自身のなかで一番響いたものは何ですか?

そこはやはり僕自身も子どもが生まれたばかりなので、感じ方がまったく違いますね。親目線に立って今まで作品を観たことがなかったので、ちょっと今回は肉子ちゃんにかなり気持ちが乗りました。彼女にとってのキクコだったり、反対にキクコから見た肉子ちゃんの気持ち、そのどちらの気持ちも分かりました。そのあたり観ていて、今までよりも分かるようになったと思います。わりと序盤から結構ダメでしたね、ウルっと来ちゃって。

―親になってみると、親子関係の映り方が変わると言いますよね。

そうですね。どれだけ一緒にいて愛情を注いだか、そういう気持ちの面でのつながりが、やっぱり大事だなと思いましたし、あっという間に大人になっていくなかで、少しでも子どもに何か残せるもの、伝えられるものはないだろうかと考えますね。

―本作に出てくる街並みがノスタルジックな印象も受けますか、地元に似ているようなところはありましたか?

自分の地元にはそれほど似ていないのですが、実家が神奈川なので海は近いんです。ここまでの漁港ではないのですが、住んでみたいな、行ってみたいなという気持ちはあります。絵がとても丁寧で、どのカットを観てもすごく芸術的だなと思ったので、本当に作り込んで完成された映像だなと思いました。

―劇中に出てくるお気に入りの場所はありますか?

バス停のシーンなど、『となりのトトロ』をオマージュしているところがありましたよね。あとはサビ付いている感じも好きなので、家にしている船の感じや、焼肉屋さんのベタついた店内とかお気に入りかもです。

―船上で暮らす親子って、確かにいいなあと思いました。

いやあ、すごくいいと思います!床がガラスになっているから魚が見えていて、すごくきれいでいいなと。秘密基地みたいな感じで、わくわくしますよね!ずっとはきついですが、キャンプ感覚で3日くらいなら住めるかな(笑)。

―さて、声優として本作に参加してよかったなと思うことは何でしょうか?

観た後に、いいものを観たなと感じられる作品だったので、そこに参加できたことは、非常にうれしいことだなと思いました。心が温かくなるような作品なので、将来子どもと一緒に観ることができたらいいなと思いました。絵や音楽が合わさって完成した時に、アフレコの時にはイメージ出来なかったものがちゃんと観えていて、僕自身すごく感動しました。みなさんも楽しみにしていてください!

 


■タイトル:劇場アニメ映画『漁港の肉子ちゃん』
■公開表記:6月11日(金)全国ロードショー
■コピーライト:ⓒ2021「漁港の肉子ちゃん」製作委員会
■配給:アスミック・エース